髄膜炎のない細菌性脳炎は理論的には可能だが、臨床的には極めて稀である
細菌性脳炎のほとんどの症例では、何らかの髄膜炎症を伴う「髄膜脳炎」として発症するため、純粋に髄膜炎を伴わない細菌性脳炎は臨床的に極めて稀である 1。
臨床的な現実
国際脳炎コンソーシアムおよび米国感染症学会のガイドラインによると、脳炎患者の大多数では、脳実質の炎症に加えて何らかの髄膜炎症が併存している 1。これは「髄膜脳炎」と呼ばれ、細菌性中枢神経系感染症の典型的な臨床像である。
診断基準における重要な注意点
脳炎の診断基準では、CSF白血球数≥5/mm³が副基準の一つとされているが、これは必須ではない 2。重要なのは:
- 免疫不全患者や感染早期では、CSF細胞数が正常でも脳炎を除外できない 2
- CSF所見が正常でも、脳実質の炎症(脳炎)は存在しうる
- 髄膜に限局した炎症のCSF所見と脳炎のCSF所見は区別できないことが多い 2
例外的な病態
結核性脳症は、髄膜炎を伴わない脳炎の稀な例として報告されている 3。この病態では:
- 結核菌の直接侵襲ではなく、免疫学的機序による
- 髄膜炎の特徴的な徴候やCSF所見が軽度または欠如
- びまん性白質浮腫と脱髄が特徴
- 主に小児で報告されているが、成人例も存在する 3
臨床的アプローチ
細菌性脳炎を疑う患者では、髄膜炎の有無に関わらず、以下の対応が必須である:
1時間以内に経験的抗菌薬治療を開始する 4
- 第3世代セファロスポリンを髄膜炎用量で投与
- 50歳以上または免疫不全患者ではアンピシリン追加
- ウイルス性脳炎の可能性があればアシクロビル併用
腰椎穿刺は禁忌がなければ速やかに実施 4
- GCS≤9、痙攣、局所神経徴候、乳頭浮腫がある場合はCT先行
- CSF細胞数が正常でも脳炎を除外しない 2
MRIは脳炎診断に最も有用 2
- CTより感度が高い
- 原因微生物の示唆や合併症の検出が可能