発熱、意識変容、軽度CRP上昇患者における鑑別疾患
発熱と意識変容を呈する患者では、感染性脳炎・髄膜炎を最優先に考慮すべきですが、軽度CRP上昇という特徴から、自己免疫性脳炎、代謝性脳症、全身性敗血症による脳症、血管性疾患も積極的に鑑別する必要があります。
主要な鑑別疾患カテゴリー
1. 感染性疾患
- ウイルス性脳炎:HSV脳炎は高齢者でより頻度が高く、迅速な診断が重要1
- 細菌性髄膜炎:意識変容は脳炎と髄膜炎の両方で見られ、初期段階では鑑別困難2
- 結核性髄膜炎:亜急性経過、渡航歴がある場合に考慮3
- 敗血症性脳症:全身性敗血症による二次的な脳機能障害1, 2
重要な落とし穴:高齢者では発熱や項部硬直が欠如することが多く、意識変容が主症状となる1, 4。古典的三徴(発熱、項部硬直、意識変容)が揃うのは50%未満4。
2. 自己免疫性・炎症性疾患
- 自己免疫性脳炎:抗NMDA受容体抗体、抗VGKC抗体関連脳炎
- 急性散在性脳脊髄炎(ADEM):感染後・ワクチン接種後の免疫介在性2
- 全身性エリテマトーデス(SLE):中枢神経ループス5
- 肉芽腫性疾患:サルコイドーシスなど1
検査アプローチ:血清および髄液での自己抗体検査(ANA、ENA、電位依存性カリウムチャネル抗体、NMDA受容体抗体)、血清ACE、全身CT1
3. 代謝性脳症
対称性の神経学的所見、肝不全の臨床徴候、発熱欠如、アシドーシス/アルカローシスがあれば示唆的3:
- 肝性脳症、腎性脳症
- 低血糖・高血糖
- 電解質異常(低ナトリウム血症)
- Wernicke脳症(チアミン欠乏)
- ミトコンドリア異常症1
検査:肝・腎・甲状腺機能、動脈血ガス、血漿・髄液乳酸、アンモニア、ピルビン酸、アミノ酸1
4. 血管性疾患
- 脳梗塞・脳出血
- 脳静脈洞血栓症
- 可逆性脳血管攣縮症候群
画像検査:造影MRI/MRAまたはCT/CTA1
5. 悪性腫瘍関連
検査:MRI+MRスペクトロスコピー、髄液細胞診、全身CT/PET、抗神経抗体・腫瘍随伴抗体1
6. その他の重要な鑑別
軽度CRP上昇に特異的な鑑別5:
- 細胞内真菌感染症
- 結核
- Fabry病
- 血球貪食性リンパ組織球症
- 機能性高体温
その他:
診断アルゴリズム
初期評価で確認すべき重要項目1, 3:
病歴:
身体所見の非対称性:
発熱のパターン:
必須検査1, 9:
画像検査:
- 細胞数≥5/mm³で脳炎を支持
- HSV-1/2、VZV、エンテロウイルスPCR
- 細菌培養、結核検査
- 自己免疫性が疑われる場合:自己抗体パネル1
血液検査1:
- 血算、ESR、CRP、自己抗体(ANA、ENA、ANCA)
- 肝・腎・甲状腺機能
- 血液培養
- CRP≥32 mg/Lは感染性の可能性を強く示唆(感度71%、特異度83%)10
臨床的注意点
- CRPが正常~軽度上昇の発熱では、細胞内感染(真菌、結核)、悪性腫瘍、自己免疫疾患、代謝性疾患の可能性が高まる
- 著明なCRP上昇(>100 mg/L)は細菌感染や悪性腫瘍を強く示唆11
- 脳卒中や全身性敗血症のリスクが高い
- 古典的症状(発熱、項部硬直)が欠如しやすい
- HSV脳炎の頻度が若年者より高い
緊急性の判断4: 発熱+意識変容+以下のいずれかがあれば1時間以内に病院到着を目指す:
- 頭痛
- 項部硬直
- 発疹(どんな種類でも)
- 痙攣
- ショック徴候