右肺のみに胸水が貯留する理由
右側のみの胸水貯留は、肝性胸水、心不全、悪性腫瘍、肺炎随伴性胸水、肺塞栓症など複数の病態で起こり得ますが、特に肝性胸水では73%が右側に発生します。 1
右側優位の胸水貯留をきたす主要疾患
肝性胸水(Hepatic Hydrothorax)
- 肝硬変患者の4-12%に発生し、73%が右側、17%が左側、10%が両側性です 1
- 腹水が横隔膜の欠損部を通じて胸腔内に移行することで発生します 1
- 重要な点として、9%の症例では臨床的に明らかな腹水を認めません 1
- 血清-胸水アルブミン較差が1.1 g/dL以上であれば肝性胸水を示唆します 1
- 予後不良であり、MELDスコアが予測するよりも高い死亡率を示します(平均MELD 14で90日死亡率74%) 1
心不全による胸水
- 心不全による胸水は約59%が両側性ですが、片側性の場合は右側が左側より多く認められます 2, 3
- 肺毛細血管圧の上昇により肺間質液が増加し、胸水が形成されます 3
- 片側性胸水が心不全患者の41%に認められるため、片側性であっても心不全を除外できません 2
- 血清NT-proBNP ≥1500 pg/mLは心原性胸水を強く示唆します 2
悪性腫瘍
- 悪性胸水の原因として肺癌が最多(25-52%)、次いで乳癌(3-27%)、リンパ腫(12-22%)です 4, 5
- 片側性の大量胸水で縦隔偏位を認めない場合、腫瘍による縦隔固定、主気管支閉塞、広範な胸膜浸潤のいずれかを示唆します 5
- 中皮腫は大量胸水と鈍い胸痛を特徴とし、広範な胸膜病変により縦隔偏位を欠くことが多いです 5
肺炎随伴性胸水
- 肺炎に伴う胸水は全胸水の16%を占めます 4
- 発熱と咳嗽などの肺炎症状が前景に立ちます 4
- CT所見でレンズ状の胸水貯留、臓側胸膜肥厚(split pleura sign)、胸膜外脂肪の肥厚が感染性胸水を示唆します 1
肺塞栓症
- 肺塞栓症の最大40%に小量の胸水を認めます 4
- 80%が血性です 4
- 胸水の大きさに比して呼吸困難が強いことが特徴です 1
- 胸水検査では肺塞栓症に特異的な所見がないため、臨床的疑いに基づいて画像検査を進める必要があります 4
診断アプローチのアルゴリズム
初期評価
病歴聴取で以下を確認:
画像検査:
胸腔穿刺の適応
胸水検査
- 必須項目: 細胞数・分画、総蛋白、LDH、糖、pH、細胞診 6
- Lightの基準で滲出性・漏出性を鑑別 4, 6
- 血清-胸水アルブミン較差 >1.2 g/dLで心不全が疑われる場合、漏出性に再分類 4
- 胸水NT-proBNP >1500 pg/mLは心不全を示唆 4
重要な臨床的注意点
見逃してはいけない疾患
- 肝性胸水は予後不良であり、肝移植の適応を検討すべきです 1
- 肺塞栓症と結核は特異的治療が可能なため、原因不明の胸水では常に再考すべきです 4
- 片側性大量胸水で縦隔偏位がない場合、悪性腫瘍(特に中皮腫)、気管支閉塞を疑います 5
診断の落とし穴
- 心不全や肝硬変による漏出性胸水の25-30%がLightの基準で滲出性と誤分類されます 4
- 心不全患者でも片側性胸水が41%に認められるため、片側性であっても心不全を除外できません 2
- 肝性胸水の9%は腹水を伴わないため、腹水がなくても除外できません 1
- 血痰を伴う胸水は気管支原性癌を強く示唆します 4