急性腎障害(AKI)の検査・治療計画
急性腎障害の診断は血清クレアチニン値の変化と尿量で行い、治療は原因の特定と除去、体液管理、腎毒性薬剤の中止を中心とした支持療法が基本となります。1
診断基準と重症度分類
機能的診断基準
- 48時間以内に血清クレアチニンが≥0.3 mg/dL (≥26.5 μmol/L)上昇
- 7日以内に血清クレアチニンがベースラインの≥1.5倍に上昇
- 尿量が6時間以上<0.5 mL/kg/時
重症度ステージング2
- ステージ1: クレアチニンがベースラインの1.5-1.9倍、または尿量<0.5 mL/kg/時が6-12時間
- ステージ2: クレアチニンがベースラインの2.0-2.9倍、または尿量<0.5 mL/kg/時が12時間
- ステージ3: クレアチニンがベースラインの3.0倍以上、または≥4.0 mg/dL、または透析開始、または尿量<0.3 mL/kg/時が24時間または無尿12時間
初期評価と緊急対応
最優先事項3, 4
まず生命を脅かす合併症を除外します:
- 高カリウム血症(心電図変化の確認)
- 肺水腫(呼吸困難、酸素飽和度低下)
- 重度のアシドーシス(pH < 7.1)
これらが存在する場合は直ちに透析を検討します。
系統的診断アプローチ
3段階の原因診断4, 5
第1段階: 閉塞性(腎後性)の除外
- 腎超音波検査で水腎症の有無を確認
- リスク因子: 高齢男性(前立腺肥大)、骨盤内腫瘍、尿路結石の既往3
第2段階: 腎前性(循環血液量減少)の評価
- 臨床的脱水徴候: 起立性低血圧、皮膚ツルゴール低下、粘膜乾燥
- 尿中ナトリウム<20 mEq/L、FeNa<1%、尿浸透圧>500 mOsm/kg
- 最近の出血、嘔吐、下痢、利尿薬使用の病歴5
第3段階: 腎性(実質性)の診断 除外診断として確立。最も多いのは急性尿細管壊死(ATN)4:
検査項目
必須検査3, 5
- 血清: クレアチニン、BUN、電解質(特にK+)、血液ガス
- 尿検査: 尿沈渣、尿蛋白、尿中Na+、尿浸透圧
- 画像: 腎超音波(閉塞性除外のため)
- 心電図: 高カリウム血症のスクリーニング
追加検査(適応に応じて)5
治療戦略
一般的管理原則3, 5
1. 原因への対処
- 腎前性: 等張晶質液(生理食塩水より平衡液を推奨)1で体液補充
- 腎後性: 泌尿器科コンサルトで閉塞解除
- 腎性: 原疾患の治療
2. 腎毒性物質の回避1
- 直ちに中止すべき薬剤: NSAIDs、アミノグリコシド、アシクロビル、造影剤(緊急時以外)
- 一時中止を検討: ACE阻害薬/ARB(特に敗血症、手術、心不全時)1
- 用量調整: 腎排泄性薬剤すべて
3. 体液管理1
- 血糖コントロール(目標値は個別化)7
- 栄養管理の最適化
- 電解質異常の補正
造影剤使用時の予防2, 8
リスク評価(Mehranスコア)2:
- 低リスク(スコア<5): 7.5%のAKI発生率
- 中リスク(6-10): 14%
- 高リスク(11-16): 26.1%
- 超高リスク(>16): 57.3%、透析21.6%
予防策8:
- 非緊急時: 3ヶ月以内のGFR測定を確認
- 高リスク患者: 経口水分摂取を推奨
- 超高リスク入院患者のみ: 静脈内輸液による体液負荷を検討
- アセチルシステインは高品質エビデンスがなく推奨されない8
腎臓専門医へのコンサルト適応3
以下の場合は速やかにコンサルト:
- 支持療法に反応しない
- 原因不明のAKI
- ステージ3以上のAKI
- 既存のステージ4以上のCKD
- 透析が必要な場合
- 糸球体疾患が疑われる場合(大量蛋白尿+血尿)4
透析開始のタイミング1, 6
絶対的適応(緊急透析):
- 治療抵抗性の高カリウム血症
- 肺水腫
- 重度のアシドーシス(pH < 7.1)
- 尿毒症症状(心膜炎、脳症)
相対的適応6:
- 血清クレアチニン値単独ではなく、臨床経過と軌跡に基づいて判断
- 個別化されたRRT開始基準を用いる
重要な注意点
よくある落とし穴1, 6
- 乏尿を見たら自動的に輸液するのは誤り。血行動態を総合評価する
- 0.9%生理食塩水より平衡液の方が腎アウトカムが良好1
- ACE阻害薬/ARBは「腎機能障害」を起こすが必ずしも「腎損傷」ではない1
- バイオマーカーは実行可能な対応経路がある場合のみ使用1, 6
薬剤師主導のプログラム3
腎毒性曝露を減らし、院内AKI発生率を低下させることが示されています。
AKIケアバンドル3
院内死亡率改善と進行リスク低減に関連しています。