重症肺炎の治療(ステロイド投与以外)
ICUに入室する重症市中肺炎の成人患者には、β-ラクタム系抗菌薬(セフォタキシム、セフトリアキソン、またはアンピシリン-スルバクタム)とアジスロマイシンまたはフルオロキノロンの併用療法を投与すべきです。1
抗菌薬治療の基本戦略
標準的な重症CAPの初期治療
重症市中肺炎(CAP)のICU患者に対する経験的治療は、以下の併用療法が強く推奨されています:
- β-ラクタム系抗菌薬:
- セフォタキシム
- セフトリアキソン
- アンピシリン-スルバクタム
プラス以下のいずれか:
- アジスロマイシン(レベルII evidence)
- 呼吸器系フルオロキノロン(レベルI evidence)1
この併用療法は強い推奨(strong recommendation)であり、単剤療法よりも死亡率の改善に優れています。1
ペニシリンアレルギー患者への対応
ペニシリンアレルギーがある場合:
- 呼吸器系フルオロキノロン + アズトレオナム1
特殊な病原体を考慮した治療
緑膿菌感染のリスクがある場合
緑膿菌のリスク因子がある患者には、以下の抗緑膿菌活性を持つ広域β-ラクタム系抗菌薬を使用:
- ピペラシリン-タゾバクタム
- セフェピム
- イミペネム
- メロペネム
プラス以下のいずれか:
- シプロフロキサシンまたはレボフロキサシン(750mg用量)
- アミノグリコシド + アジスロマイシン
- アミノグリコシド + 抗緑膿菌活性フルオロキノロン1
市中型MRSA感染のリスクがある場合
MRSAのリスク因子がある患者には、上記の標準治療に以下を追加:
- バンコマイシンまたはリネゾリド1
抗菌薬以外の重要な支持療法
呼吸管理
非侵襲的換気(NIV):
- 低酸素血症または呼吸困難がある患者には、NIVの慎重な試行を検討
- ただし、重度の低酸素血症(PaO₂/FiO₂比<150)と両側肺胞浸潤影がある場合は即座に挿管が必要1
人工呼吸管理:
- びまん性両側性肺炎またはARDSを呈する患者には、**低一回換気量換気(6 mL/kg理想体重)**を使用すべき(強い推奨、レベルI evidence)1
循環管理と副腎機能評価
敗血症性ショック:
- 適切な輸液蘇生にもかかわらず持続する敗血症性ショックがある患者では、入院後24時間以内にドロトレコギンアルファ活性化の治療を検討(弱い推奨、レベルII evidence)1
副腎機能不全のスクリーニング:
- 輸液蘇生後も低血圧が持続する重症CAP患者では、潜在性副腎機能不全のスクリーニングを行うべき(中等度の推奨、レベルII evidence)1
治療期間と経過観察
抗菌薬投与期間
- 最低5日間の治療が必要(レベルI evidence)
- 48-72時間解熱し、臨床的不安定徴候が1つ以下になるまで継続1
- 初期治療が同定された病原体に対して無効であった場合、または髄膜炎や心内膜炎などの肺外感染を合併している場合は、より長期の治療が必要1
静注から経口への切り替え
以下の条件を満たした時点で静注から経口投与へ切り替え:
- 血行動態が安定している
- 臨床的に改善している
- 経口薬を摂取できる
- 消化管機能が正常1
初回抗菌薬投与のタイミング
救急外来(ED)を通じて入院する患者では、ED滞在中に初回抗菌薬投与を行うべき(中等度の推奨、レベルIII evidence)1
重要な注意点
よくある落とし穴
ICU直接入室の重要性: 一般病棟に入院後にICUへ転棟した患者は、EDから直接ICUに入室した患者よりも死亡率が高い2。重症度評価ツール(2007 IDSA/ATS重症CAP基準)を使用して、適切なトリアージを行うことが重要
併用療法の遵守: 重症CAPでは単剤療法ではなく、必ず併用療法を行う。エビデンスは併用療法の優位性を強く支持している1
病原体特異的治療への移行: 信頼できる微生物学的方法で病因が同定された場合は、その病原体に対する標的治療に切り替えるべき1
最新のエビデンス
2024年の研究では、セフタロリンまたはセフトビプロールを含む治療レジメンが重症CAP管理の最良の選択肢と考えられています3。また、デラフロキサシン、レファムリン、オマダサイクリンなどの新規分子も有望な治療戦略として期待されています3